「第23回 日本形成外科学会基礎学術集会」で研究発表
10月9日~10日に長野県で開催された「第23回 日本形成外科学会基礎学術集会」で、聖マリアンナ医科大学形成外科幹細胞再生医学講座と、脇坂クリニック大阪院長の脇坂長興、小林一広先生(メンズヘルスクリニック東京院長)、井上肇先生(聖マリアンナ医科大学特任教授、NPO法人F.M.L.事務局長)、アンファー株式会社、株式会社細胞応用技術研究所による白髪に関する研究結果を発表しました。
なお、この発表を行った佐藤有里先生(聖マリアンナ医科大学幹細胞再生医学講座特任助教)は、この学会で優秀口演一般演題抄録賞を受賞されました。
色素細胞(=メラノサイト)で作られたメラニン色素が、メラノソームという袋状の構造物に貯蔵されます。これが、細胞内で決まったレールの上を運ばれて細胞のヘリに到達し(微小管輸送)、毛母細胞に受け渡しする(転移;トランスロケーション)ことで、我々の黒髪の色は作られています。このメラニン色素の輸送経路と代謝活性に着目して研究を行いました。
その結果、機能性ペプチドがメラノソームの輸送の手助けをし、メラノサイトの代謝活性化を促進していることが確認でき、白髪改善の可能性が示唆されました。一方で、黒髪と白髪の毛根組織ではメラニン合成に関わる遺伝子発現は、黒髪と白髪ではほとんど差異がありませんでした。そこで、メラノソームの輸送に係わる分子(Rab36)の遺伝子発現を解析したところ、被験者の一人に機能性ペプチド使用後1ヶ月の白髪で黒髪よりも遺伝子発現の低下が認められました。このことから、白髪の原因には、メラニン色素の輸送経路の異常も一因となりうる可能性が考えられます。
今後もこの研究の対象例を増やすとともに、色素幹細胞への影響も探っていきたいと考えております。