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第6回国際毛髪研究学会

表題: Estimation of finasteride effect on androgenic alopecia patients by determination of the triplet repeat number in androgen receptor gene and androgenic hormones in serum. (アンドロゲン受容体の3塩基リピート配列長、及び血清中男性ホルモン値の測定による男性型脱毛症患者のフィナステリド有効性評価)

発表日: 2010年6月

場所: ケアンズ(オーストラリア)

講演者: 長坂 良

2010年6月にオーストラリアのケアンズで6th World Congress for Hair Research(第6回国際毛髪研究学会)が開催されました。今回は本学会で「アンドロゲンレセプターリピート配列長、及び男性ホルモン血清値とフィナステリドの有効性との関係」について発表された長坂先生(F.M.L.)にお話を伺いました。


フィナステリド有効性の予測メカニズム ~Norwood及びLee分類に基づく新しいタイピング法を用いた治療効果判定試験~

Interviewer 学会発表お疲れさまです。ケアンズはいかがでしたか?

長坂先生 ケアンズは海がきれいでとても素敵な街でした。季節は日本の秋から冬にあたる時期でしたが、日中は暑く半袖で歩けるくらいでした。また学会には様々な国の先生方が参加されていました。私個人的には、特に韓国からいらしている先生が多かったように感じます。とにかく、非常に活気のある学会であったと思います。

Interviewer では、今回の学会で発表された内容についてお聞かせ下さい。

長坂先生 今回は「アンドロゲンレセプター(AR)遺伝子の3塩基リピート配列長、及び血清中男性ホルモン値の測定による男性型脱毛症患者のフィナステリド有効性評価」というテーマで発表させて頂きました。とはいっても、「AR遺伝子のリピート配列長が短い人は男性型脱毛症になりやすく、フィナステリドが良く効く」という事実や、「AR遺伝子のリピート配列長が短い人は長い人と比較して、フィナステリド投与によりジヒドロテストステロン(DHT)量が減少する」といった事実はこれまでのF.M.L.の研究ですでに明らかになっていることでした(第1~4章参照)。今回の我々の研究成果はその様な事実の解明というよりはむしろ、「研究規模の拡大」と「試験方法の再構築」にあると考えています。

Interviewer なるほど。研究規模の拡大とはどういうことでしょう?

長坂先生 前回の研究は1196名の患者さんを対象に研究を行ったものです。これでもかなり規模の大きな試験でしたが、今回はさらに試験の精度を上げるために2227名もの患者さんに協力をして頂きデータを算出しました。

Interviewer かなり多くの患者さんのデータが元になっているんですね。研究機関などですと、なかなかこの様な大規模な研究を行うことは難しいと思います。これもF.M.L.という環境があってこそ可能な研究であったといえるかもしれませんね。 では、「試験方法の再構築」とはどういうことでしょう。

長坂先生 先ほども説明しましたが、F.M.L.ではAR遺伝子のリピート配列長とフィナステリドの有効性について検討してきました。その際、Hamilton-Norwood分類という脱毛症の進行度を判定する分類表を用いて患者さんの症状を点数化し、症状の改善度を計数的に算出してきました。要するに分類ステージが1つ良くなれば、1点ということです。しかしHamilton-Norwood分類は元々臨床現場で医師が患者さんの脱毛症を診断することを目的に作られたもので、その分類は比較的大まかなものでした。ですから、1ステージ良くなるには相当な改善度がなければ1点にならないのです。我々の行ったような研究で治療改善度を評価するには、実のところもっと細かい分類が必要になります。そこで我々はLee分類とHamilton-Norwood分類を組み合わせたF.M.L.独自の分類表を作成し、それを元に治療効果の評価を行うことにしました(図1参照)。

図1(クリックで拡大)

Interviewer Hamilton-Norwood分類と比較すると、かなり細かい分類になっていますね。治療効果をより細かく評価できるようになったということですね。

長坂先生 ええ、かなり正確な評価が行えるようになりました。今回はこの評価系を用いて前回同様の試験を行いました。すなわち、AR遺伝子リピート配列が短い人と長い人にフィナステリドを投与し、その効果を比較しました。その結果、今回の方法でもやはりリピート配列の短いグループの方がフィナステリドによる脱毛症改善効果が大きいことが分かりました。さらに、グループごとに治療前後の血中DHT量を測定したところ、リピート配列の短い人では長い人と比較してDHTの量が大幅に減少していることが分かりました。

Interviewer 前回よりも精度の高い今回の試験において、AR遺伝子リピート配列長とフィナステリドの有効性の関係が裏付けられたということですね。

長坂先生 はい。さらにAR遺伝子リピート配列長の短いグループと長いグループにフィナステリドを2ヶ月間投与してDHTの変化量を見たところ短いグループのほうが有意に減少することも確認されました。この結果は、リピート配列の短い人は長い人よりフィナステリドによるDHTの生成抑制が起きやすく、脱毛症も改善しやすいという事を示唆しています。 この技術を臨床現場に応用することで、フィナステリドの有効性をより早く見極めることができるようになると考えられます。すなわち、AR遺伝子の配列や治療初期のDHT変化量を測定することで、本来6ヶ月以上はかかるフィナステリド有効性の診断が1~2カ月で行えるようになるのです。

Interviewer 素晴らしい成果ですね。周囲の先生方からはどの様なご意見がありましたか?

長坂先生 特に実際に発毛治療に従事している先生から高い評価を受けました。発毛治療に携わっている先生であれば、フィナステリドの有効性のばらつきは誰しも経験していることです。その様な人達からすると、フィナステリドの有効性がすぐに分かるという事は非常に魅力であったようです。

 

Interviewer 治療を行っている患者さんにとっても非常に魅力的な事ですね。誰でも早く自分にあった治療方法を見つけたいですからね。 本日は大変貴重なお話ありがとうございました。

監修者情報(サイト内監修・ページ監修)

写真:顧問医師 浜中 聡子

顧問医師浜中 聡子

経歴
北里大学医学部卒業
北里大学大学院医療系研究科 臨床医科学群精神科学修了
北里大学東病院精神神経科
北里大学病院救急救命センター
亀田総合病院精神科
国際医療福祉大学熱海病院精神科・講師
2009年10月 AACクリニック銀座院長
2017年3月 Dクリニック東京 ウィメンズ
(旧ウィメンズヘルスクリニック東京)院長に就任
2018年2月 クレアージュ大阪(旧Dクリニック大阪 ウィメンズ)顧問医師に就任
2020年11月 クレアージュ東京 エイジングケアクリニック(旧Dクリニック東京 ウィメンズ)院長に就任

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